先日,「発工」(はっく),「発家」(はっか),「割工」(かっく),「割家」(かっか)という訳語を考案した。
「発工」はハック〈hack〉・ハッキング〈hacking〉,「発家」はハッカー〈hacker〉の訳語だ。ハックというのは英語で「たたき切る」というような意味で,未開の地を大胆に切り開くようなイメージも伴う言葉だが,コンピューター用語としてはある種の技術開発を指す。精緻で計画的な開発というよりは,大雑把で手早い開発手法を指すことが多い。悪く言えば「小細工」とか「間に合わせ」に近いものもあり,この乱暴さはハッキングとクラッキングが混同される一因とも言えるだろう。その意味で,最初に思いついたのは「破工」や「破家」という訳語だったのだが,両者の混同が問題視されているなかであまり好ましい語感とは言えない。そこで,「ひらく」に通じる開発や発明の「発」を選んだ。
「割工」はクラック〈crack〉・クラッキング〈cracking〉,「割家」はクラッカーの訳語だ。クラックは「割る」という意味を持つため,ほぼ直訳といえる。クラッキングとは簡単に言えばコンピューターを悪用することであり,想品(ソフトウェア)の不正入手もこれに含まれる。面白いことに,想品の不正入手は日本のネット乱語(スラング)で「割る」とも言う。これは,非合法に流通している想品を指す英語のネット乱語〈warez〉(ウェアーズ)を,「ワレズ」とローマ字読みしたことから来ている。つまり,ネット用語において「割」の字は非合法活動であることを連想させやすく,ハッキングに対するクラッキングという用語の意図をよく表せる。
今後,希哲館ではこれらの訳語を積極的に使っていきたい。