「イノベーション全体主義」の弊害については,いつかちゃんとした文章を書かなくてはならないと思っている。
要するに,日本ではよく見受けられる「社会で一丸となってイノベーションを創出しよう」といった考え方ついての批判である。
やや乱暴に言ってしまえば,大したイノベーションを起こしたこともなく権威を持ってしまった中年以上の大人達が,公的な立場と平凡な発想でイノベーションを方向付けようとする「善意の愚行」が,真のイノベーションの源泉である私的な(難しく言えば実存的な)感性や発想を抑圧している問題について,真っ向から批判する人間があまりにもいない。
とはいえ,現にイノベーションを起こそうとしている人間にはそんなことを語っている暇がない。これも「行う人間」と「語る人間」が二極化しがちな問題の一つだろう。メディア活動には準備や蓄積が必要なので,語る人間というのはどうしてもタレント化して実践から離れてしまう。インタープット手法の確立が最後の望みか。