今月10日に発生し世間を騒がせていた常磐道あおり運転暴行事件で,暴行を働き指名手配されていた宮崎文夫容疑者と喜本奈津子容疑者がようやく逮捕された。
当初,テレビのニュース番組等では,犯行現場をそのまま捉えたドライブレコーダー映像が容疑者の顔にモザイクをかけた状態で放送されたこともあり,ネット上では例のごとく「犯人探し」が始まった。この過程で,全く無関係な人物が写真付きの実名で犯人扱いされ,凄まじい誹謗中傷を受けるという「デマ事件」が発生した。デマの被害者女性は法的措置を検討しているという。
この種のネット私刑(リンチ)は何か大きな事件が起こるたびに問題となるが,スマイリーキクチ中傷被害事件が認知されてから10年経っても,多くのネット利用者の情報リテラシーがあまりにも幼稚なままであることに驚きを禁じえない。
私もデマ被害者女性の名前が拡散されていく様を見ていたが,明らかに出典の怪しい情報であり,虚偽であった場合のことを少しでも想像出来れば拡散に加担することはありえない。この拡散に加担した全ての者は,真摯に反省するのは当然のことだが,大人ならまず自身の幼稚さを恥じるべきだ。やっていることの悪質さは暴行事件の容疑者と大差ない。
一部,義憤や正義感でやったことだからと言い訳する者,顔を公開しなかったマスコミが悪いと責任転嫁しようとする者がいるが,それこそ恥の上塗りだ。この程度の幼稚なデマを見抜けない人間が,どの口でマスコミ批判しようというのか,という話でもあるし,無実の人間が理不尽に危害を加えられ,それに自分が加担していたという事実を知った時,怒りを自分に向けられないならそれは「正義」ではなく,ただひたすら自分のための「鬱憤晴らし」に過ぎない。
歴史上,群集が自身の「正義感」と思い込みから悲惨な事件を起こした例は枚挙に暇がない。『十二人の怒れる男』ではないが,小さな違和感に気付き,それに拘り続けると,全く別の事実が見えてくるということがある。「もっともらしく思える情報」ほど少し疑ってみるくらいで丁度いいのだ。