さっき『東京都知事はなぜ金に汚なく見えるのか』という文章を書いていて思ったことだが,東京都知事に必要なのは「郷土愛」なのかもしれない。
東京以外の地方の場合,地元出身の知事はそう多くないが,やはり地域に何らかの愛着があることが多い。例えば熊本藩主細川家出身の細川護煕氏が熊本県知事を務めたことは有名だが,地方の場合,あまり地元との縁を重視し過ぎて閉鎖的になっても弊害がある。
ただ,東京は江戸時代以来,地域外出身者を中心に作られてきた都市だ。中央政権との関わりが深く,どうしても精神よりも利益が優先になりがちだ。東京都知事という地位も,単に影響力の大きさだけで魅力があるので,総理大臣を狙えない政治家たちの狙い目になってしまっている感がある。要は,権力志向の強い半端者の温床になっている。都知事の素行の悪さ,都知事選の顔ぶれの胡散臭さはこれが原因だろう。
これを正したければ,東京都知事にこそ郷土愛を求めることだ。それこそ,江戸時代以前から東京圏に根付いていた家の出身者なら,「開拓者」としての自家の歴史に誇りを持っているだろうし,その誇りに恥じない政治を心がけてくれるかもしれない。少なくとも,一族が何百年も過ごした土地を簡単に汚そうとは思わないだろう。もちろん,これも可能性の一つに過ぎないが,いま都知事の地位が極めて悪いバランスにあり,何らかの是正が必要なことは確かだ。