日本語の空隙を埋めているカタカナ英語の一つに,「リリース」〈release〉がある。主に「解放」という意味を持つ言葉だが,特に商品・製品を世に出すこと一般について使われる場合,相応しい日本語表現がないことが多い。例えば想品の場合,それが商品としての発売であることもあれば,非営利製品の公開であることもあり,これらを区別する必要がない場面での表現に困る。
最近,この意味でのリリースを私は「離立」と訳し始めている。音写でもあり,「離して成立させる」という語感がよく意図を掴んでいるのではないかと思う。大和言葉の「はなす」は漢字の「離」と「放」で微妙に書き分けられるが,リリースの原義に近いのは「放」だ。「離」はやや悪い意味で使われることも多い字なので,これを使うことに少しためらいがあった。しかし,「立」と組み合わせると意外に悪くなく,「独立」に近い感覚で使えることに気付いた。
ちなみに,「プレス リリース」は別に「触れ知らせ」と訳している。