描主 | 宇田川浩行#F85E |
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上描き | 希哲9年(2015年) 01月30日 18:35 |
下描き | 希哲9年(2015年) 01月30日 17:50 |
利承 | 希哲館普通利承(KUL) |
「キャラクター」(character)もまた,日本語において多用されながら定訳が見つかっていない言葉だ。
例えば,主に人間を描いた物語におけるキャラクターは「登場人物」と言えばいい。問題は,空想的な世界観におけるキャラクターで,「人物」と表現するのが不自然な場合であったり,マスコットのように,物語から独立して存在するキャラクターであったりする場合だ。
そもそも「キャラクター」とは何かというと,英語では広く「性質」を意味する言葉だ。掴みどころのない抽象的な言葉だが,それだけに応用範囲が広い。日本語は,漢語の意味的な重さゆえに「登場人物」などと意味を具体化・限定しすぎる嫌いがあるので,これを補うために抽象性の高い英単語を借りるということはよく行われる。
では,キャラクターに相当する日本語表現がないのかといえば,実はある。灯台下暗しというやつで,よく使われている「柄」(がら)というのが日本語における「キャラクター」にほぼ相当する表現だ。
改めて考えると,「柄」は日本語において意外なほど多用されてきた便利な言葉だ。間柄,銘柄,家柄,国柄,事柄,仕事柄,人柄,役柄……「柄が悪い」などというのもそうだ。ただ,「柄」単独では何を意図しているのか分かりにくい。どちらかというと,「模様」という意味に捉えられるだろう。
そこで,私が創出したのが「柄工」(がらく)という訳語だ。「物柄細工」あるいは「役柄細工」という意図を込めている。これを基本に,「キャラ」という略語に対応して,接頭辞または接尾辞的に「柄」を使ってもいい。例えば「キャラ立ち」は「柄立ち」,「キャラ弁」は「柄弁」,「敵キャラ」は「敵柄」,「ゆるキャラ」は「ゆる柄」となる。「キャラクター柄」という紛らわしい言葉もあるが,これは「柄工模様」と置き換えられる。
「柄」が「キャラクター」にほぼ相当するという事実は,ついこの前発見した。というのも,デザインを「徹案」(てつあん)と訳した時に,キャラクター デザイン(柄工徹案)をどう訳すか考える必要があったからだ。最初は,「キャラクター」を音写するために「伽楽」(きゃらく)などという訳語を考えていた。
それから「柄工」に辿りつき,しばらく様子見をしていた。現代の訳語というのは,昔のように権威や規則で押しつけようとしても上手くいかない。使い手が使いたくなるような訳語でなければ広まらない。自分が自然に「柄工」と書きたくなり,「柄工」と書くのが楽しいと確認出来たとき,私はこの訳語の正しさに確信を抱けた。
音写という観点からいうと,「がらく」では「がらくた」のような響きだと感じられるかもしれない。しかし,「た」抜きなので「がらくた抜き」という縁起の良いオチがつく。これをもってよしとしよう。