「Unix」(ユニックス)は OS の一種である。
1970年,当時 AT&T 傘下であったベル研究所で誕生した。初期の主要な開発者はケン・トンプソンとデニス・リッチーである。移植性を高めるため,C 言語もほぼ同時期に開発された。C は,トンプソンが開発した B 言語をリッチーが改良したものであり,Unix とは切り離せない関係にある。
1971年に発行された両名による「Unix Programmer's Manual」は,Unix に関する最初の公式な文書である。
名称の由来は,ベル研究所が MIT や GE 社と共同で開発していた Multics(MULTiplexed Information and Computing Service)をもじった Unics(UNiplexed -)である。Multics は先進的でありながら肥大傾向にあり,商業的には失敗に終わっている。この教訓を活かして,単純で見通しのよいシステムを志向したのが Unix といえる。ちなみに,「multi-」は「多」,「uni-」は「単一」といった意味をもつ接頭辞である。
当初から研究的な側面と商業的な側面をあわせ持っていた。一方ではオープンシステムやオープンソース,フリーソフトウェア運動など,「開かれたソフトウェア」という考え方の源泉となるが,その主導権を巡り「Unix 戦争」とも呼ばれる激しい対立が起き,Unix 本来の系統は閉鎖的になっていく。
いずれにせよ,Unix はその開発手法や周辺文化も含めて情報技術全般に多大な影響を与えたソフトウェアとみなされている。1983年,トンプソンとリッチーは Unix 開発の功績によりチューリング賞を受賞した。
なお,「UNIX」という商標の権利者は AT&T からノベル,X/Open と移り変わり,現在では The Open Group が所有している。同団体が大文字での「UNIX」という表記を推奨しているため,商業的なニュアンスを避け,文化面も含めた広い意味で,あえて普通名詞のように「Unix」(unix)と表記する事がある。