{一夫多妻制}{ナンビクワラ族}{クロード・レヴィ=ストロース}{広告付き}(4)

{悲しき熱帯 K#F85E/FD89}

悲しき熱帯(原題・仏語:Tristes Tropiques,1955年)は,クロード・レヴィ=ストロースの著作である。

部族の社会契約

ナンビクワラ族の観察を経て,首長が物質的な貧しさと激務の責任を負っていることから,部族が「同意」と「契約」の上に首長に妻を多くもつ権利を与えていることを発見し,そのような契約は社会の付属要素としてではなく社会を構成している主要素である,とする。

しかし,部族を主導する首長に一夫多妻の権利を与えていても,部族の人間は一般に首長の座を望まない。そこに,責任感や裁量権をもつことに対する意識の個人差があり,これを進んで負おうとする人間がいることで,部族社会は保たれている。

交換の抽象化

部族の一夫多妻制についての考察で,集団の個々の人間が女性を首長に対して贈与しているのだが,首長はその個人にではなく集団に対して包括的な責任を負っており,原始的社会においても,個人対個人の交換を超えて,首長とその部族,という社会観念が生まれていることを指摘している。