ツイッター身売り問題を考える

描主宇田川浩行#F85E
上描き希哲10年(2016年)
10月07日 01:35
下描き希哲10年(2016年)
10月06日 23:29
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

この月庭でも度々触れてきた「ツイッター危機」が山場を迎えている。ツイッターは世界屈指のソーシャル メディアに成長しながら,上場から一度も黒字化を達成できず巨額の赤字を抱えている。ここ最近,「身売り」を模索しているという報道が散見されたが,最新の情報によれば10月中にも入札が始まる見通しで,最有力候補は顧客関係管理(CRM)を中心に事業を拡大しているセールスフォースだ。

私は今年の2月に「Twitter 危機を商機に」という文章でツイッターの課題を分析しつつ買収の可能性についても触れている。その時の結論は,ツイッター社が固有かつ有益な情報なり技術を蓄積出来ていないため,ツイッターの価値は主にそのブランドで評価されるだろう,というものだった。さらに,「長く持って3年,早ければ今年中に」サービス終了となる可能性が高いと書いている。いまのところ,この予想は外れていない。買収額については2兆円を越えるなどと報じられていたが,先の分析の通り,私は過大評価だと感じている。

「身売り先」に関しては,セールスフォースの他にもアップルグーグル持株会社のアルファベットディズニー等が候補とされていたが,最新の一部報道ではこれらの企業は辞退したとも伝えられている。私もこの中で「最もマシな買い手」を考察していたのだが,その結論も「セールスフォースが一番マシ」だった。もっとも,まだまだ実際のところは分からないので考えたことを書いておこうと思う。

中立地帯としての終わり

まず,個々の買収案について考察する前に,一つ強調しておきたいことがある。ツイッター社が「身売り」するということは,インターネットにおける中立地帯としての役割を終えるということだ。この点は重要な割にあまり強く認識されていない感がある。

ツイッターという媒体は,ツイッター社というほぼ単一的な運営企業があってこそ自由・中立というイメージを保つことが出来た。これがグーグルアップルマイクロソフトのようなプラットフォーム企業のサービスであれば,ここまで幅広く利用されることは無かっただろう。少なくとも,いずれかの「アンチ」は利用を避けただろう。それぞれの立場を越え,名無しの権兵衛から政府まで,日常生活から革命にまで利用されてきたことを考える上で,サービスの独立性は無視できない要素だ。

このままツイッターが買収されるとしたら,それは紛れもなく現状が行き詰まってのことなので,現状維持は期待出来ない。買い手によって何らかの改革が試みられるはずだ。それがどういうものか,どういう結果になるかは分からないが,いずれにせよツイッターは中立地帯としての役割を終えることになる。

セールスフォースと

さて,候補とされている買い手のうち,私が「最もマシ」と感じたのはセールスフォースだ。

他の候補は企業としての性格が割とはっきりしているが,比較的新興で発展途上の感がある同社はまだ未知数なところが多い。必ずツイッターを良くしてくれるという確信があるわけではないが,はっきりと悪い予感がするわけでもない。ビジネスライクでまだ強い癖がついていない分,むしろツイッターと一緒に上手く成長していけるのではないか,という気もする。そうである,というだけでなく,そう感じさせてくれる,ということも利用者にとっては重要なことだ。

何より,広告以外のマーケティング手法でツイッターを強力に収益化出来る可能性がある。最近,ツイッターの広告はしつこい上に内容もきわどいものが増えているとして非常に評判が悪い。ネットを自己表現の場にしている者にとって悪趣味な広告ほど嫌なものはない。広告頼みでの収益化には限界がある。

ディズニーと

セールスフォースの次にマシなのは恐らくディズニーだ。マシといっても「アルファベット(グーグル)が最悪だから」というだけの理由なので,大して明るい未来も見えない。

ツイッターがディズニー傘下に入った場合,最も心配されるのは表現規制だ。特にディズニー関連の知的財産の利用や,不健全とみなされるような表現について厳しくなるのでないか,という懸念は拭えない。そもそも,どう収益なり相乗効果を生み出すつもりなのか現時点でまったく見えていないため,目論見がよく分からない。ツイッターの特色を変えず維持出来るほどノウハウがあるとも思えないので,買うとしたらディズニー色に染め上げるつもりではないかと勘繰ってしまう。

個人的に一番心配なのは,先に述べたようなツイッターの中立性が極端に崩壊することだ。歴史的に見ても,ディズニーはアメリカの象徴であり資本主義の象徴だ。どんな企業も完全に中立ではありえないが,ディズニーは最も政治的印象の強い部類の企業だ。反米的な利用者からの反発はあるだろうし,結果として利用者層が親米派に偏る可能性が高い。

アルファベットと

最近の報道ではアップルは有力候補から外されていたので,最後にアルファベット(グーグル)に買収される可能性について考えるが,私はこれが最悪の身売り先だと思っている。

最悪という最大の根拠は,そもそもアルファベットが意欲的に見えないということだ。既に辞退したなどとも報じられているが,アルファベットにしてみれば,「手頃な値段なら試しに買ってもいい」程度の感覚ではないかと思う。傍からも持て余すのが目に見えている。同社はこの手のサービス運営が下手なことで有名で,Google+ は失敗しているし,ツイッターを買ったからといって上手く運営出来る保証など何もない。そして,同社は持て余したサービスを容赦なく終了させることでも有名で,最も「ツイッター消滅」を予感させる。

私なら Google アカウントと連動させて,利用者をある程度吸い上げることに重点を置くだろう。ツイッターのシステム自体はもはや古く,例えば私が開発しているデルンの方がはるかに先進的だ。ツイッターの価値は,やはりブランドとそれを支持している人にある。ただ,それが喉から手が出るほど欲しいかというと,もうそういう時代でもないのだと思う。

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