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{換配コンパイル備立ビルド出振るいデプロイ K#F85E/D64E-129D}

コンパイルリンクビルドインストールデプロイ……これらは想品〈ソフトウェア〉開発において,想品の組み立てから配備までの各工程を指す用語だ。当然ながら極めて多用されるが,日本語では例のごとく全てカタカナ英語として用いられてきた。希哲館では最近になってようやく訳語が定着しつつある。

この中で,インストール〈install〉とリンク〈link〉には早めに「引装」と「輪結」という訳語が出来ていた。インストールは,勘機コンピューター〉に想品を導入することを指すが,これは「引き込む」と「装置する」のイメージから「引装」で問題なく音写出来ることに気付いていた。リンクの方も「輪結」でほぼ固まっている。リンクの語源は「鎖の環(輪)」だ。「連結」に近い語感で,「連環」より直感的に理解しやすいのではないかと思う。

残りの訳語は今年になって出来た。

コンパイル〈compile〉は,主に高層言語から機械語への変換処理を指すが,これは「変換し配する」の意で「換配かんぱいと訳せる。

ビルド〈build〉は,コンパイルなどを含めて想品を最終的に完成させることを指すが,これは「備立びりつと訳した。ちなみに和訓では「備え立て」と読めるが,これは戦場での陣容を意味する「陣立て」の同義語だ。これは偶然だったが,開発者の意気込みはまさに「備え立て」なので悪くはない。

デプロイ〈deploy〉は,主に想品を外部に向けて配備することを指す。インストール(引装)が「引く」感覚だとすると,デプロイは「押す」感覚だ。これは「出振でぶるい」と訳した。はじめの訳語は「出張り」で,これには戦場に出向くという意味もあり「備立」との相性が良かったが,「出張しゅっちょうに見えてしまうのが問題だった。そこで,力を発揮するという意味の「振るう」(揮う)で「張る」を置き換えて「出振るう」という語を造り,その連用形をデプロイの訳語とした。

こうして,換配,輪結,備立,引装,出振るい,と一連の訳語が揃った。技術者としては,こうした訳語で技術文書が美しくなるのが一番嬉しい。