月庭における調和型広告の課題

描主宇田川浩行#F85E
上描き希哲7年(2013年)
08月16日 17:39
下描き希哲7年(2013年)
08月16日 17:18
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

私は「調和型広告」というものを提唱している。

これはいわば,「媒体良し」「広告主良し」「公衆良し」の,広告における「三方良し」を追求した手法であり,いま氾濫している「みにくい広告だらけのウェブ」に対するアンチテーゼである。

デザイン性,経済性,利便性……あらゆる面で最高度の調和を計るという理想のもとに実験しているのだが,もちろん色々な課題を抱えている。広告というのはどこまでいっても「違和感あってなんぼ」なのではないかという,根本的にこのコンセプトと矛盾する思いすら抱きつつある。

独自の広告システムは開発途上であるため,いまのところ月庭では,一部の描出の末尾に Google AdSense の「リンク ユニット」というものを小さく挿入している。これは,ページの内容に関連するキーワードが表示されて,そこに飛んでやっと広告の一覧が表示されるという,なんとも奧ゆかしい広告形態である。直接,広告内容が表示されるわけではないため,比較的,ページに調和しやすい。もちろん,地味で目立たない上に,最終的に広告を踏んでもらえる可能性はかなり低くなる。

しかも,月庭ではこのリンク ユニットを必ず「末尾」に置いている。つまり,内容が長ければ長いほど目につく可能性は低い。表現物の純度を損うという危惧から,先頭や途中に挿入することはしていない。その上,広告であるということを必ず明示しているので,誤クリックの類はまず期待できない。

先に「一部の描出」と書いたが,実はこれが何よりも難しい点である。「希哲館広告掲載基準」において,広告を掲載すべきでない内容というものがある。特に,事件事故・災害・戦争などで深刻な被害者がいる場合は広告を掲載できない。

ところが皮肉なことに,「衝撃的な話」「悲惨な話」というのは注目を集めるものである。

検索エンジンからの流入で,最近目立っているキーワードが2つある。一つは,「ジェシー・ワシントン私刑事件」に関するもので,これは,アメリカ合衆国における黒人少年への凄惨な私刑(リンチ)事件を取り扱かっている。もう一つは,顔面障害を負ったケイティ・パイパーさん(存命)に関するものである。

「ジェシー・ワシントン」関連は常に一定数の検索があり,「ケイティ・パイパー」関連はテレビ等で定期的に取り上げられるたび大量にやってくるが,当然,このような問題に関して広告を載せることは出来ない。他人の不幸を一度でも金に換えてしまえば,媒体としての品位を損うからである。

とはいえ,その判断も一筋縄ではいかない。例えば,大震災が起きて,必要な情報を素早く多くの人に伝える必要があれば,広告によって運営体制の維持費を賄うことが悪いとは言えない。

また,これはごく個人的な感性の問題もあり,「独自性のある情報には広告を載せない」という方針を採っている。つまり,私や希哲館が持っている世にも奇妙な構想の数々には広告を掲載せず,客観性の担保できる中立的な情報にのみ広告を掲載することにしている。これは,「言論無償の原則」と掲げている通り,希哲館は思想性に依存した経営を行うべきではないという考えにも基づいている。

従って,広告の掲載に際しては,一つの描出をするたびに広告を付けるかどうかの設定を行う。デフォルトが「無広告」になっているため,広告を付けたければ,内容に問題がないか確認した上でいちいちその作業を行う必要がある。これは,ロング テール向きのシステムには辛い仕様である。大量のコンテンツの大半に,手間の問題で広告が付いていない。

さらに,人目を引く「衝撃的な話」や「珍奇な話」への広告掲載は自主規制している訳で,広告媒体としての月庭は何重苦も抱えていることになる。もちろん,広告収入はいまのところゼロである。

希哲館経営にはそんな苦労もあるよ,という話でした。

出力論組プログラム虎哲*イチ 1.1号
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