不調や不振の類義語に「スランプ」がある。スランプは,原因が掴めず悪循環に陥いっていくような状態について特に使われる。
私は外来語を見つけたらとりあえず訳語を考える癖がついているので,まずは「ラン」に「乱」を当てるとして,「ス」にあたる漢字を探し始めた。適当に「取」を頭に付けて「取乱」という語を造ってみたら,これが偶然にもそのまま「取り乱す」の漢語的表現になっている。確かに,スランプというのは一種の取り乱した状態であるとも言える。
訳語を大量に造っていると,こういう新しい解釈を生み出すような面白い偶然がたまにある。「しゅらん」という読みではまず酒の方の「酒乱」を連想するが,これも取り乱しているというイメージではそうかけ離れていない。