千本の手は「救済の手」であって戦いとは直接的な関係はないが,日本の漫画等では手数の極めて多い攻撃やそのような力を持つ存在の模調〈モチーフ〉として使われることがあり,特に強大なものとして扱われる傾向がある。阿修羅のような複数の手を持つ戦いの神のイメージが投影されたものか。
『HUNTER×HUNTER』では最強級の技として「百式観音」が,『NARUTO』では最強の一族として「千手一族」が登場し,『GANTZ』には千手観音そのものが強敵として現われる。中世ヨーロッパ風の世界を舞台とした『ベルセルク』では,仏教とは無縁の世界観であるにも関わらず千手観音をもじった「神千手砲」(ゴッドせんじゅカノン)という技が登場する。いずれも人気作品であり,日本ではこのようなイメージが幅広く共有されていると言って良い。