書籍信仰と電子媒体の収益モデルについて

描主宇田川浩行#F85E
上描き希哲8年(2014年)
01月16日 23:29
下描き希哲8年(2014年)
01月16日 22:50
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

出版業界はなぜこうも「書籍」という形式に拘るのか,なぜ電子書籍の時代に入りつつあるいまもなお,発想が「紙の書籍の電子版」を超えないのか,ずっと不思議だった。考えてみると,これは書き手の問題も大きいのかもしれない。「書籍」という形を求めているのは出版社でもなく読者でもなく,実は書き手なのではないだろうか。とどのつまり,「本を出す」という形式が持つ権威性に,書き手の多くが囚われすぎているのかもしれない。

私は,そう遠くない将来,書籍はウェブに近い(つまりウェブではない電子媒体で代替されるようになると思っている。それは単に,書籍の内容をウェブのように見ることが出来るなどということではない。これまで書籍に収納されていた個々の情報が,もっと参照・検索しやすい「ページ」に抽出され,動的に再構成・集約され,流通するようになるだろう。新しい書き手達が,その新しい基盤で従来の書籍以上に価値あるものを書くようになれば,やがて現存する書籍の大部分は顧みられることもなくなるだろう。

これは,例えば Wikipedia を思い浮かべてみればそう非現実的な話でもないのが分かるはずだ。Wikipedia は,書籍を含む様々な情報源から,重要な情報を抜き出して作られている。もちろん,これが理想形でもなければ問題も多く抱えているが,決して小さくない範囲で「とりあえず十分な情報源」として使われているのは事実だ。

ボランティアでは書き手の意欲に限界があるので,問題は,著作者が利益を確保する手段であり,その基盤としての著作権管理機構だ。これに関しては,マイクロペイメント等で読者がわざわざ個別のコンテンツを購入するのではなくて,プラットフォームが広告や会費によって収益を確保し,それを著作者に分配するモデルが基礎になるだろうと思う。もちろん,補完的な意味ではコンテンツ課金機構も必要になるだろう。

このような分配モデルは,動画系サービスやまとめ系サービス,ニュースサイト等ではよく試みられているし,古くは雑誌のような媒体にも見られる。利用者がストレスを感じない簡便な決済システムを作るよりずっと容易に実現できる古典的な手法でもある。ところが,書籍に匹敵する本格的な情報コンテンツの流通にはまだ目立った応用例がない。これに関しては大きな課題がいくつかあるが,例えば,十分な表現力を持ち,統一的に管理できるほど洗練された文書単位をどう作るか,ということもその一つだ。

私は『希哲館*月庭』で,まさにその課題に取り組んでいる。最近,ようやく諸々の課題に解決の目途が立ち,少しずつ成果を見せられるようになってきた。興味があれば是非,希哲館がどのように新しい情報媒体を実現していくのか,注目して頂きたい。

出力論組プログラム虎哲*イチ 1.1号
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