Mastodon 運用は技術から戦略へ

描主宇田川浩行#F85E
上描き希哲11年(2017年)
04月22日 03:13
下描き希哲11年(2017年)
04月19日 23:05
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

いま,Mastodon(マストドン)という分散型マイクロブログTwitter 用者ユーザー)を中心に注目を集めている。簡単に言えば,誰でも自由に設置出来る「インスタンス」と呼ばれる捌き手サーバー)同士を連携させ,一企業に依存することなく Twitter のようなサービスを提供しようという試みだ。まだ荒削りながら,なかなか可能性を感じさせる出来になっている。

日本でも,個人や企業が続々とインスタンス運用に乗り出し,用者数では日本で運用されているインスタンスが一二を争う状況になっている。もともと Twitter は日本用者が多いことで知られているが,Mastodon でも日本人の動向は重要だ。

技術から戦略へ

Mastodon の将来性や意義についてはまた別の機会に書くとして,とりあえず私がいま強く感じていることは,Mastodon のインスタンス運用における最先端の課題が,すでに技術から戦略に移っているということだ。特に日本の場合,これまでは如何に多くの用者を集めて,快適な環境を提供するかという競争になっていたが,この方向性での運用は間もなく下火になるだろう。後は,如何に最小限の資源で最大限の便益を生み出すか,という戦略の競争になっていくと私は見ている。

これは,Twitter 社が経営に行き詰まっていることを考えれば自明の理だ。長年,高度な技術者を集めてシステムの改良と最適化を続けてきた巨大資本が黒字化に成功していないサービスを,経験不足の個人や日本企業が最適化不足のシステムを使って収益化に成功するとは考え辛い。Mastodon が注目を集めている理由に「広告が無い」ことや「古き良き Twitter の面影」があるため,改造するにも限度があり,そもそもガツガツ収益化を狙うようなものでもない。

それでも,これまでは目新しさもあって,巨大インスタンスを運用する個人や企業はその技術力先見性を宣伝することが出来た。例えば,日本初の本格的なインスタンスである mstdn.jp を個人で運用していた人は業界ですっかり有名人になり,これが縁でドワンゴに就職出来たそうだ。インスタンス『Pawoo』で企業として初めて本格参入したピクシブも注目を集めることに成功した。ただ,これは先行者利益というもので,二番煎じでは意味が無いし,その効果も長続きしない。

Mastodon の「分散型」という性質は,こういった大艦巨砲主義的な運用が壁にぶつかった時,それを乗り越えるためにある。それは他でもない,Twitter がぶつかった壁なのだ。

「月極めインスタンス」の可能性

私はここ一週間ほど,Mastodon の性質を最大限に活かせる運用戦略について考えていた。そして,その一つの例として「月極めインスタンス」というものを考案した。一ヶ月ごとに初期化リセット)されるインスタンスだ。

Mastodon のようなサービスを運用する上で問題となるのは,技術や設備だけではない。特に,個人情報や投稿内容の管理など,倫理的法的な問題は荷が重い。データが蓄積されていくことで,こういった問題が積み重なっていく。ならば,定期的に消してしまえば良い。これだけで,人的にも機械的にも,あらゆる負担が劇的に軽減される。

この方式ではライフログのような長期的な利用は不可能になるが,そもそも Mastodon の仕組みや一般的な運用体制でそんな利用方法は元から無理があるわけで,最初から切り捨てる。

継続して利用したい場合,アカウント再登録の手間が生じるが,アカウント登録作業自体はごく簡単なものなので,これも大きな問題ではない。むしろ,Mastodon で問題になるのはアカウント登録における「心理的負担」だ。インスタンスは運用者や運用体制が不明確な状態であることが多く,個人情報や(つい使い回しが多くなる)パスワードを入力することをためらう人が多い。「毎月全てのデータが抹消される」ことはこの心理的負担を大きく軽減する。

また,毎月生まれ変わるインスタンスなので,古参新参の対立のようなコミュニティにありがちな問題も発生しにくい。とにかく気軽に参加出来ることを重視した運用戦略だが,これはつまり,企業にとっては新規顧客にアピールしやすいということも意味する。この戦略は,すでに自社でこの種のサービスを保有している企業が,インスタンスを客寄せに使いつつ,その欠点や不満を自社サービスへの誘導に活用することを想定している。これが「最小限の資源で最大限の便益を生み出す」の意だ。

ちなみに,初期化しても全く同じドメイン名を使い続けると,他のインスタンスとやりとりする時に混乱が生じる可能性が高い。この問題は,例えば example.com というドメイン名を使う場合,実際のインスタンスには 1.example.com,2.example.com というように世代毎に連番を付けたサブドメインを使って回避することを考えている。

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