Twitter フランチャイズという奇策

描主宇田川浩行#F85E
下描き希哲11年(2017年)
09月12日 16:26
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

依然として大赤字に苦しんでいる Twitter に,最近新たな問題が浮上している。アカウントが本人の心当たりもなく一方的に凍結されてしまうという,Twitter アカウント凍結問題だ。これには,暴力的な表現を含んだツイートをしたアカウントが,その文脈や意図に関わらず機械的に凍結されてしまうという問題もあれば,悪意ある第三者が「通報」機能を乱用して,無実のアカウントを凍結に追い込むことが出来てしまうという問題もある。

Twitter は日常的に記録・表現・連絡等の手段として活用している用者が多いため,こうした一方的な凍結措置に反発と危機感を表明する声が高まっている。真偽のほどは定かではないが,しつこいに対して「死ね!」と書いたアカウントが凍結された,というような話も広まり,Twitter 運営公式アカウントが否定する事態になっている。それでも Twitter 社の対応には不透明な部分が多く,用者の不安感は払拭されていない。

このような状況の中,一部では分散型マイクロブログMastodon に拠点を移そうという動きがあり,インスタンス最大手の Pawoo(パウー)はアカウント数が一時急増した。

Mastodon にも課題は多く,現状では Twitter の完全な代替にはなりえないが,このまま Twitter 社が抜本的な経営改革に成功しなければ,Twitter は赤字とコミュニティの混乱に耐え切れず消滅してしまう可能性が高い。一時,Twitter 社の「身売り」も検討されたが交渉は頓挫している。その理由は主に「コミュニティとしてのイメージの悪さ」だったと考えられている。

そんな Twitter 社を救う戦略として私が提唱しているのが,Mastodon を利用した「Twitter のフランチャイズ化」という奇策だ。

まず,Mastodon を Twitter と同等の外観・使い勝手に改造し,それを AGPL に従い無償で配布する。ただし,「Twitter」や「ツイート」といった用語は Twitter 社の登録商標であるため,これをインスタンスとして公に利用するためには Twitter 社の許諾を得る必要がある。Twitter 社は,「自分のサイトに独自の Twitter を設置したい」という要求に応え,規約の整備と Twitter インスタンスの管理指導,ブランド イメージの保守などを行い,インスタンス設置者に課金して収益を上げる企業となる。これは近便(コンビニ)などと全く同じ構造のフランチャイズ事業だ。

私が Twitter 危機 に関して再三指摘してきたように,Twitter の価値は技術ではなくブランドにある。大企業が買収に二の足を踏むようなブランドではあるが,「特設 Twitter」を持ちたい個人や中小企業はいくらでもあるだろう。Mastodon にはその性質上「一貫した規約の不在」という欠点があり,これが二次利用や周辺サービスの開発を難しくしている。Twitter というブランドのもとでインスタンス群の規約を統一することで,一定の相互運用性を確保することが出来る。

開発やインフラの維持といった,Twitter 社が必ずしも競争優位に立っておらず赤字の主要因になっている部分はコミュニティで分担し,Twitter 最大の価値であるブランディング経営資源を集中させるわけだ。収益化に成功し余力が生まれ,インスタンス管理者が窓口となって用者にきめ細やかな対応が出来るようになれば,はじめに触れた凍結問題のような問題も起きにくくなるだろう。

奇しくも最近では,大企業ではなく用者が中心となり「協同組合」を組織して Twitter を支えようという動きが出てきている。やや非現実的ながら Twitter の担い手として「草の根」が注目される中,Twitter フランチャイズ という Mastodon を活用した Twitter 社とコミュニティの役割分担は,折衷案としてむしろ現実的な路線と言えるだろう。

もちろん,いきなり Twitter 全体を Mastodon のインスタンス群で置き換えようというのは無理があるが,Twitter 社が実験的なプロジェクトとして始める分には十分な実現可能性があるし,挑戦の価値は十分にある。

私はこの方式を Twitter 社向けに考え始めたのだが,今では「Mastodon フランチャイズ」としてもっと広く有用なものになるかもしれない,と考えるようになっている。Twitter 社が出来なければ,外部から同様の運動を起こして Twitter に圧力をかけていくことも考えられる。

例えば希哲社では,『月庭』(デルン)との連携を重視した Mastodon フランチャイズとして「キット*ツイスト」を検討している。『月庭』を中心に,Mastodon(あるいはその互換実装)を利用しつつ Twitter の代替を目指す,まさに「ツイスト」(より合わせ)型の戦略だ。こうした外部の動きで Mastodon フランチャイズの有用性が認められれば,Twitter も変化せざるをえなくなるだろう。

出力論組プログラム虎哲*イチ 1.1号
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