ケネディが上杉鷹山を尊敬していたという説について

描主宇田川浩行#F85E
上描き希哲8年(2014年)
10月05日 11:42
下描き希哲8年(2014年)
10月05日 11:35
利承
ライセンス
希哲館普通利承(KULクール

江戸時代名君・上杉鷹山(うえすぎ ようざん)こと上杉治憲(─はるのり)は,内村鑑三英語で著した『代表的日本人』で海外に紹介された。また,新渡戸稲造はやはり英語で著した『武士道』の中で,「朕は国家第一の下僕なり」という言葉を残したプロイセンの名君・フリードリヒ弐世と同様の思想を持った日本の為政者として鷹山に触れている。

実際にどれほど海外で知られているのかはよく分からないが,以上のような経緯もあり,鷹山は「海外でも尊敬されている日本人」であると少なからぬ日本人が思っているようだ。明確な証拠がないにも関わらず,ジョン・F・ケネディなどアメリカ合衆国大統領の数名が鷹山を尊敬していたという説が流布されてきた。ケネディに関しては,日本人記者からの質問に答える形で鷹山を尊敬していると発言したらしいが,政治家はリップサービスも仕事のうちなので,日本人向けに語ったことはあまり鵜呑みに出来ない。特に鷹山などは日本人が海外に売り込んできた人物なので尚更だ。しかし,ケネディは訪日経験がないためこの時の状況にもよるだろう。事前に用意が出来る状況でなく咄嗟に答えたのであれば,確かに関心を持っていたことになる。いずれにせよ,信頼性のある記録が公にされていないので真相は不明だ。

先月27日,ケネディ元大統領の娘であるキャロライン・ケネディ駐日米国大使が,鷹山が藩主を務めた米沢藩の中心地にあたる山形県米沢市を訪れた。ケネディ大使は,昨年11月に東京都内で行われた講演の中で,父のケネディ元大統領が「上杉鷹山の善政と公益への献身を称賛していた」と語り,これを聞いた県が招いたとのことだ。これによって,「ケネディ鷹山尊敬説」が証明されたという人もいるが,ちょっと落ち着いてほしい。結果的に説が補強されたのは確かだが,これでは,大使が直接父から聞くなり熱心に語るところを見るなりしたのか,それとも大使も俗説を鵜呑みにしたのかよく分からない。大使は親善も重要な仕事なので,良い材料があれば肯定的に解釈するのは当たり前ともいえるのだ。そして,ケネディ大統領暗殺事件大使が5歳の頃の出来事だ。この場合,大使は父に関する情報を殆んど記録や伝聞から得ていると考えるのが自然だろう。

もちろん,鷹山が実際に海外で尊敬を集めていたという証拠が今後発見されるのであれば,それに越したことはない。ただ,「海外」を権威として,海外で尊敬されていることをもって尊敬せよ,というのは日本人が考えがちなことではあるが浅ましいことだ。それこそ鷹山の名に泥を塗るようなものだろう。疑り深い私から見ても,鷹山が名君であることは疑いない。そうであれば,そんなつまらないことに腐心せず,ただありのままを伝えていくことに尽力すべきだ。そうすれば本当の意味で海外に伝わってもいくだろう。

出力論組プログラム虎哲*イチ 1.1号
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