先日の一日一文「なぜデライトに希哲館事業が必要だったのか」でもデライトと希哲館事業の関係について書いたが,ここで構想されている希哲館という機関は,いわば“要素技術”でもある。
その役割は,デライトのような輪郭法応用技術に,安定した運用環境を提供することだ。
最初にこのような機関が必要だと考えた直接のきっかけは,実は「知番管理主体」の問題だった。輪郭に固有の知番を持たせるということは,少なくとも効率性を重視する限り,中央集権的な管理主体を作らざるをえない(便宜上,現在の用語を使っているが,「輪郭」も「知番」も呼び名が定まっていないような時だ)。
インターネットでは,ICANN という組織が似たような役割を担っている。例えば,kitetu.com とブラウザのアドレス欄に打ち込んで希哲館のウェブサイトに握接出来るのは,それを保証してくれる組織のおかげだ。同じように,ある知番が一つの輪郭を示すことを保証するには,何らかの機関が必要だったわけだ。
このような目的のために,いかに効率性や信頼性の高い組織を作るかということは,すでに工学の問題ではないか。そう考え,「制度工学」を提唱したこともある。希哲館では,組織のいわゆる「制度設計」を工学として捉えている。
そのためには,“絶対的独立性”が必要になる。私がデライトの安定拡大戦略を重視する理由でもある。
分散技術が注目される近年だが,私は昔から中央集権型の可能性を追求することを考えてきた。中央集権的な制度が信頼出来ないなら,信頼出来る制度をゼロから作ってしまえばいい,というわけだ。
技術としての希哲館という問題意識は,“技術としての中国”という目の前の脅威を通して,自由主義における“技術としての国家”という問題意識に発展しうる。これについてはまた後日の一日一文で書くだろう。