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{ツールは通類 K#F85E/2510-E4B4}

ツール〈tool〉という便利なカタカナ英語がある。原義は「工具」だが,広く「道具」,「手段」という意味でも使われる。どちらかといえば,細かい作業を上手く進めるための道具という意味合いが強く,便利なもの一般を指すのに使いやすい。

日本語の「道具」は,仏教に由来し,本来は「仏道用具」の意で用いられた言葉だ。そのせいか,実利的なものから求道的なものまで意味合いが広く,場合によっては使いづらい。中国語ではよりツールに近い抽象的な意味で〈工具〉という言葉が使えるらしいが,日本語ではやや具体性を帯びすぎるように感じられ,抽象的なものを指して工具とは表現しづらい。例えば「コミュニケーション ツール」のツールを工具と表現する感覚は日本語話者には無い。

去年私は,ツールに対する訳語として「通利つうりを考案していたのだが,なんとなく違和感を覚えてあまり使わなかった。最近,ツールという言葉を使わざるをえない場面に出くわすことが多くなり,再考してみるに,当時「通利」の予備案としていた「通類つうるいが良いのではないかと思うようになった。「」というのは道具の「」を連想させる字でもあり,仏教用語では「通力」(神通神通力)などと言うように,「自在に操る」という意味で使われた字だ。「道具」と比べて,実用性を強調した表現として悪くない。

ちなみに,「コミュニケーション ツール」は私の訳語を組み合わせると「交鳴通類」と表現出来る。