先日,「アセンブリは集め振り」という文章を書いた。その集め振りの中で,「ニーモニック」〈mnemonic〉というこれまた厄介な用語があった。
ニーモニックの本来の意味は「記憶術」だが,集め振りでは,数値の並びである機械語に割り当てられた文字列のことだ。例えば転写せよという CPU への命令を MOV と記したり,加算せよという命令を ADD と記したものをいう。C 言語以後の高層言語に慣れている今時の人にとっては当たり前過ぎてかえって何を言っているか分からないかもしれないが,数値を覚えやすい記号に置き換えるという至極単純なことから始まり,その記号の複雑な配列をより単純な記号に置き換える,ということを繰り返しながら現在の高層言語が出来ている。
さて,このニーモニック,最初は「似物」とでも訳そうかと思ったが,普通に発音すると料理の方の「煮物」に聞こえてしまう。かといって「似せ物」(偽物)とするわけにもいかない。そこで「似文句」という訳語を考えた。「機械語に似せた文句」の意だが,語感も面白くなかなか使い勝手が良い。
最近,x64(x86-64)を基礎とした集め振り言語とカーネルの開発に入る準備も進んでいるので,こうした低層言語周りの翻訳は増えていくだろう。