『行動経済学』は,友野典男の著作である。
処罰で低下するモラル
グニーズィとラスティチーニは、罰金がない場合には、親は遅刻することに対して罪悪感を感じ、その感情が遅刻を防いでいたのであろう、ところが罰金が導入された後は、「時間をお金で買う」という取引の一種と考えるようになり、やましさを感じずに遅刻が出来るようになったのではないかと説明している。
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(p.305)
フランスの詩人ポール・ヴァレリーがこの点を鋭く指摘している。「罰することが道徳心を弱らせてしまう、そのわけは、罰することで罪に償いは終わったと思わせるからだ。罪は罪への恐怖を刑への恐怖におとしめる──要するに罪をゆるすわけだ。そして、罪を取引のできる、計量できるものに変えてしまう。値切ることも可能なのである」(東・松田訳、『ヴァレリー・セレクション』上巻、平凡社、281頁)。
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(p.305-306)
近い将来の小さな利得、遠い将来の大きな利得
この逆転現象が起きる理由について,脳神経学的な説明が p.352 に述べられている。